お正月に飲むイメージがある甘酒ですが、最近栄養価の高さから健康や美容効果があると広まり人気が高まっています。
ただ甘酒にも酒粕と米麹の原料のものがあり、また市販に出回っている甘酒にはあまりおすすめできない商品もあります。
今回は甘酒の
- 酒粕と米麹の原料の違い
- 注目の栄養成分
- 甘酒の効果や効能
- おいしい甘酒の作り方
などを中心に詳しく紹介します。
甘酒の種類!酒粕と米麴の違いについて
甘酒には原料と製造方法が違う2種類の甘酒があります。
麹(こうじ)を使用する甘酒
原材料:米こうじと米
酵素(アミラーゼ)によって米に含まれているデンプンを糖化することで甘味がでてきます。
昔、「一夜酒(ひとよざけ)」と呼ばれたのはこの製法から来たもので、冬でないと酒を造れない酒蔵が夏の副業に手掛けていたとも言われています。
アルコールを使用しないので、お酒が苦手な人はもちろんのこと、小さいお子さんから妊婦さんまで幅広く飲むことができます。
また砂糖も使用しないので、カロリーが気になる方にもおすすめです。
酒粕を使用する甘酒
原材料:酒粕
お湯に酒粕を溶いて加熱し、砂糖などの甘味を加えたもの。
日本酒由来の酒粕には、発酵酵母など各種栄養素も多く含まれており手軽に甘酒をつくれます。
ただし、材料の酒粕にはアルコールが含まれていますので、アルコールに弱い方は注意が必要です。
また砂糖を加えることで米麹の甘酒よりもカロリーが高くなってしまいます。
酒粕はすり鉢などを用いて滑らかに溶かしたり、塩を一つまみ加えるなど工夫して飲む方もいるようです。
どちらも栄養豊富な点は同じですが、飲みやすさやカロリーの点から、アルコールやお砂糖が入っていない米と米こうじから作る甘酒が人気です。
甘酒の栄養成分!「飲む点滴」と言われる理由は?
甘酒が「飲む点滴」とも言われているのをご存知ですか?
それは、甘酒に含まれる豊富な栄養成分にあります。
①ブドウ糖
ブドウ糖は点滴の原料として使用される成分です。
砂糖よりカロリーが引いだけでなく、ブドウ糖を少しとるだけで血糖値がアップし脳の空腹感が解消されます。
また、ブドウ糖をとることで疲れている脳が回復し、イライラがなくなったり精神的にリラックスできる効果もあります。
ブドウ糖は米麹の甘酒に含まれています。(酒粕の糖分は砂糖)
点滴の原料ということは飲む点滴は「米麹の甘酒」のことを指します。
②必須アミノ酸全種類
タンパク質の材料となるアミノ酸の数は約20種類あります。
そのうちアミノ酸には体内で合成できない(食べ物で摂取するしかない)必須アミノ酸が9種類ありますが、甘酒には全種類含まれています。
必須アミノ酸の働き・効果や効能
必須アミノ酸 | 働き・効果・効能 |
---|---|
イソロイシン | ●成長を促進して肝臓や神経の働きを助ける ●筋肉組織の主成分の1つで筋力を強化 |
ロイシン | ●筋肉組織の主成分の1つで筋力を強化 ●肝臓の機能を高める |
リジン | ●疲労回復・集中力を高める●髪の健康(育毛効果) ●肝機能や不妊の改善効果 |
メチオニン | ●かゆみやアレルギーの原因となるヒスタミンの 血中濃度を下げたり、抑うつ効果もある |
フェニルアラニン | ●興奮作用のあるドーパミンなどの神経伝達物質の もとになる。鎮痛作用や抗うつ効果も |
スレオニン | ●成長を促進する作用 ●肝臓に脂肪がたまるのを防ぐ➡脂肪肝予防 |
トリプトファン | ●脳や神経の働きを安定させるセロトニンの元の成分 。鎮痛・催眠効果がある |
バリン | ●筋肉組織の主成分の1つで筋力を強化 ●体の成長を促し、血液中の窒素のバランスを整える |
ヒスチジン | ●子どもの成長に欠かせない成分 ●神経の働きを助けたり、ストレスを軽減する |
必須アミノ酸の中で最近注目されているのは
- イソロイシン
- ロイシン
- バリン
これらは「BCAA(分岐鎖アミノ酸)」と呼ばれており運動中のエネルギー源にあります。
さらに疲労回復の働きもあるため、運動前後に摂ると有効です。
また、BCAAは筋肉が活動するときそのエネルギー源としても使われます。
BCAAを多く摂ることで基礎代謝量が上がり、健康的なダイエット作用が期待できるのです。
このように必須アミノ酸は成長や精神を安定させるために欠かせない成分です。
ビタミンB群
甘酒に含まれているビタミンは
- ビタミンB1
- ビタミンB2
- ビタミンB6
- ナイアシン
- 葉酸
などのビタミンB群です。
ビタミンB群は酵素の働きをサポートする補酵素であり、脂質の代謝を促してくれる働きがあります。
また美肌効果や血液を作る働きもあります。
酵素
米麹の麹には多くの酵素が含まれていて、甘酒には100種類以上の酵素が含まれています。
代表的なものは
- アミラーゼ:デンプンをブドウ糖に分解
- プロテアーゼ:タンパク質をアミノ酸に分解
- リパーゼ:脂肪を脂肪酸に分解
などがありますが、
- 食べ物の消化や吸収
- 筋肉を動かす
- 思考を巡らせる
- 新陳代謝を行う
- 老廃物や毒素を排出する
という大切な働きが酵素にはあります。
ただ、年を取るとともに年々酵素は減っていってしまうので、積極的に摂りたい成分です。
代謝酵素が不足すると新陳代謝が悪くなるため
- 肥満
- 体の疲れ
- 肩こり
- 腰痛
- 慢性頭痛
- 目の下のクマ
- 目の充血
- 便秘や下痢
- 寝つきが悪くなる
- 白髪が増える
などの症状が出る場合があるので酵素がたっぷりの甘酒を飲みましょう。
これらの紹介した栄養成分はいわゆる栄養剤としての点滴とほぼ同じであることから、「飲む点滴」といわれています。
食物繊維とオリゴ糖
ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌のエサとなることで、善玉菌が増えて、元気になることで腸内環境が改善されます。
米麹の甘酒に期待される効果効能!
栄養成分が豊富な甘酒はさまざまな効果をもたらせてくれます。
ただ酒粕と米麹では栄養成分の種類に少し違いがあるので注意が必要です。
①美白・美肌効果
甘酒の材料でもある麹には、コウジ菌が豊富に含まれています。
このコウジ菌は、シミの原因となる過剰なメラニンの生成を抑えてシミやくすみを防いでくれる効果があります。
酒蔵の人達が「手が白くキレイ」なのは麹菌が原因と言われています。
また、ビタミンB2 は皮膚や粘膜を保護する働きがあり、B6を一緒に摂ることで肌の再生力がアップして美肌効果が高まります。
甘酒を飲むだけで皮膚を活性化してくれる効果が期待できるのですね。
さらに麹が出す100種類以上の酵素のおかげで食べ物を食べた際、私たちの消化酵素を節約することができます。
その結果、自身の限りある酵素を代謝へ回すことができるので細胞の入れ替わりや修復がスムーズに運び、若返り効果が期待できるのです。
美肌効果は酒粕・米麹どちらにもありますが、「飲む日焼け止め」になるほど肌荒れ対策に効果的なのは、「米麹の甘酒」です。
「米麹の甘酒」には、「エルゴチオネイン」という「ビタミンC」よりも強い「抗酸化作用」があります。
エルゴチオネインには肌の老化を抑制する効果があると言われる成分が入っています。
紫外線を受けても炎症を起こしにくくなるため、「紫外線対策」になることで「飲む日焼け止め」ともいえます。
ダイエット効果
甘酒にはダイエット効果があり、酒粕と米麹どちらも期待ができますがダイエットにおすすめなのは、お茶の水健康長寿クリニックの白澤卓二先生によると「酒粕の甘酒」のほうがよりダイエット効果があるとテレビ番組で紹介しています。
①レジスタントプロテインによるダイエット効果
酒粕には元々米の中に入っている「レジスタントプロテイン」と呼ばれる「たんぱく質の一種」が含まれています。
この「レジスタントプロテイン」は、油と一緒になって、油を排出してくれるので油が吸収されないので太らないのです。
「油の排出能力」が高いことで「酒粕の甘酒」の方がダイエットに効果的と言えます。
酒粕には砂糖が含まれていますが、ブドウ糖よりも少ない量で甘くすることができるので、カロリーは「米麹の甘酒」よりも抑えることができます。
米麹の甘酒には砂糖が含まれていませんが、ブドウ糖による甘みと、お米からの自然な甘みもあるので飲みやすいです。
②イノシトールによるダイエット効果
甘イノシトールは以前、ビタミンB群として扱われていましたが体内でも合成ができて欠乏症もないため、現在はビタミン様物質として扱われています。
このイノシトールは脂肪の流れを良くして、肝臓に余分な脂肪が蓄積しないようにコントロールする働きがあります。
➂ビタミンB群によるダイエット効果
ビタミンB1は糖質の分解する働きがあります。
そしてビタミンB2とB6を一緒に摂ると美肌効果がアップするだけでなく脂質の代謝を高め体内に余分な脂肪がたまるのを防ぎます。
④リパーゼによるダイエット効果
酵素の一種であるリパーゼには皮下脂肪や内蔵脂肪を燃焼する働きもあります。
⑤スレオニンによるダイエット効果
必須アミノ酸のスレオニンはイノシトールと同じように肝臓に脂肪がたまるのを防ぐ働きがあるので脂肪肝にも効果があると期待されている成分です。
このように多くの成分の相乗効果によりダイエットが期待できるが甘酒です。
米麹でもダイエットができますが、どちらがより高い効果が得られるかというと酒粕の甘酒です。
ただし妊婦さんがあまり太らないようにしたいという場合はアルコールが含まれていない米麹を飲むようにしましょう。
整腸作用・便秘改善
食事制限をするダイエットをすると栄養が偏って便秘になりがちです。
米麹の甘酒には麹由来の食物繊維やオリゴ糖が含まれていますが、これらは善玉菌であるビフィズス菌や乳酸菌のエサとなって腸内環境を整え腸の働きを良くする効果があります。
これにより便秘が解消されるとポッコリお腹もスッキリし、老廃物も便と一緒に外に出してくれるので吹き出物やニキビの予防や改善にもつながります。
さらに腸内環境が改善されると免疫力がアップするので病気にもかかりにくくなります。
腸内環境を改善することは単に便通が良くなるというだけでなく、健康や美肌、ダイエットにとっても良いことばかりです。
疲労回復・夏バテ防止・熱中症対策
甘酒に含まれる豊富な栄養成分には、消化吸収を助ける消化酵素やエネルギーを効率よく転換するビタミンB郡が含まれています。
このため、食事をした時に効率よく身体に栄養を取り込む事を助け、大量に含まれているブドウ糖が回復を強力にサポートしてくれるので疲労回復や夏バテの強い味方になります。
また、ビタミンB1は「疲労回復のビタミン」と呼ばれています。
ブドウ糖は先ほども紹介したように米麹にしか含まれていないので、疲労回復のためには「米麹の甘酒」を選びましょう。
また甘酒は水分・塩分(ナトリウム)・糖分のバランスと栄養バランスの良さから熱中症対策にも効果があると言われています。
寝つきがよくなる睡眠効果
日本酒の製造工程では、「酒粕」を作る前に、清酒酵母を使って「米麹」をアルコール発酵させています。
最近の研究では、眠気を誘う脳の物質として注目されている「アデノシン」は、脳の中で濃度が高まってくると非常に眠気を誘い、良い睡眠に入ることができることがわかりました。
清酒酵母は「アデノシンの作用」を強めることから、速やかに睡眠に入ることが出来て、いい睡眠が誘導されるということがわかってきています。
アルコールは摂りすぎると逆に眠れなくなり、睡眠障害を起こす場合もあります。
ですが「酒粕の甘酒」は基本アルコール分1%以下のため、アルコールの障害なしに良い睡眠にすることが出来ます。
米麹の甘酒の簡単でおいしい作り方
甘酒は市販のものがいろいろありますが、市販されている全ての飲み物は食品衛生法で加熱処理が必要です。
そのため熱に弱い酵素やビタミンB群が十分に含まれていない可能性があります。
熱に強い酵素もあるので商品によっては酵素が含まれていますが、やはり手作りにはかないません。
米麹を使用して作る甘酒の基本の作り方と濃縮甘酒の2つを紹介します。
甘酒は簡単に作れるのですが、失敗するとすれば温度管理の部分なので、そこは炊飯器を利用して調整するようにしましょう。
①米麹で作る基本の甘酒の作り方
【材料4人分】
- 米麹 500g
- 炊いたご飯(またはおかゆ)2~3合(約700~1kg)
- 水 1,000~1,200ml
※ご飯は白米で良いですが、健康のために玄米を使用したり、もち米にすると甘みが増します。
【作り方】
- 米麹をもみほぐす
- 炊いたご飯を60℃くらいまで冷やす
- 米麹、ご飯、水を合わせる(水は好みで加減する)
- 50~60℃で保温する。炊飯器の保温機能を使う時は必ずフタを開けるようにしましょう。その際にふきんなどをほこりよけとしてかけるようにしてください。
- 5~6時間ほどで完成します。
冷めたら容器に入れて冷蔵庫で保存します。
おいしく飲める期間は冷蔵庫で1週間程度です。
②米麹と水だけで作る濃縮甘酒
米麹と水だけで濃厚で甘みが強い甘酒ができます。
デザートのようなおいしさです。
【材料4人分】
- 米麹500g
- 水500ml(乾燥麹を使用する場合は多めに)
【作り方】
- 米麹をもみほぐす
- 米麹に水をひたひたになるように合わせる
- 50~60℃で保温する炊飯器の保温機能を使う時は必ずフタを開けるようにしましょう。その際にふきんなどをほかりよけとしてかけるようにしてください。
- 1時間おきにかきまぜる。これを繰り返し3回目くらいに麹と水がなじんでやわらかくなったら(これを糖化といいます)、そのまま置いておく
- 6~8時間ほどで完成です。
冷めたら冷蔵庫で保存しましょう。
保存期間は冷蔵庫で1か月と基本の作り方よりも長持します。
甘酒の失敗しないためのポイント
甘酒の作り方は簡単ですが、ポイントを間違えると失敗する可能性が高くなります。
きっちりとポイントを押えましょう。
①米麹の選び方と使用量
米麹には生麹と乾燥麹があります。
- 生麹はそのまま使用できるのですが保存期間が短め
- 乾燥麹は水に戻して使用しますが保存期間が長い
という特徴がありますが、どちらでもおいしく作ることができます。
また米麹は色々なメーカーが販売していますがそれぞれ特徴があり、
同じように作ったつもりでも甘みが風味がかなり違う場合があります。
その中でもおすすめは「鶴味噌醸造 乾燥米こうじ」です
ここの米麹は甘みもしっかりあり、クセもないので甘酒にピッタリです。
創業明治3年と伝統のある会社です。
鶴味噌醸造の米麹の商品パッケージに載っている甘酒の作り方は
- 米麹 500g
- 温かいご飯200g
と書いてあります。
ただこれですと米麹の量が多く、失敗することもあります。
実際はこれより少なくても、おいしい甘酒は作ることが可能です。
米麹の使用量に関して、先ほど紹介した甘酒の基本の作り方である
- 米麹 500g
- 炊いたご飯(またはおかゆ)2~3合(約700g~1kg)
またはお米が2合の場合は半分以下の200~250gでも十分におしいく作ることができます。
さらに米麹の種類にもよると思いますがお米2合で米麹100gでも濃厚ではありませんが、さらっとした感じの甘酒になり十分おいしかったです。
米麹の量は基本の量を把握しておいてあとは自分の好みで量を減らしてみることをおすすめします。
②温度管理
炊いたご飯を60℃くらいに冷ますのは見た目ではなかなか温度がわからないので難しいかもしれません。
これを誤って70℃以上のご飯に米麹を混ぜてしまうと麹に含まれる酵素は温度に弱いのできちんと発酵することができません。
ちゃんと温度計で計ってから混ぜるようにしましょう。
1,000円以下で色々なメーカーが販売していますので一つ持っていると便利です。
タニタ スティック温度計 オレンジ TT-533-OR(アマゾン)
炊いたご飯の温度と一緒に大切なのが炊飯器の保温温度ですね。
メーカーによっては保温の温度管理ができる炊飯器もあるので、その場合は60℃前後に調整すれば良いのですが、温度管理ができない炊飯器も多いです。
そのためにもクッキング温度計で1~2時間おきに温度が変化していないか確かめるようにしましょう。
何度も確かめるのが面倒という場合はヨーグルトメーカー(または甘酒メーカー)という商品があります。
例えばこちらの「マルコメ 甘酒メーカー糀美人」は
保温・タイマー機能で発酵に最適な温度(20~55℃の一度単位)を一定(1~48時間の1時間単位)に保つことができるので甘酒だけでなく、ヨーグルトや塩麹などの発酵食品を作ることができるのでおすすめです。
まとめ
飲む点滴と呼ばれる甘酒には原料が
- 酒粕によるもの(アルコール、砂糖)
- 米麹(ノンアルコール、無加糖)
の2つに分けられます。
お酒が弱い人や子ども、妊娠中の方はもちろんのこと、健康やダイエットをしている人は米麹が原料の甘酒を選ぶようにしましょう。
甘酒には
- 美白・美肌(米麹がよりおすすめ)
- ダイエット(酒粕がよりおすすめ)
- 整腸作用・便秘改善
- 疲労回復・夏バテ防止(米麹のみ)
- 睡眠効果(酒粕のみ)
といった効果が期待されています。
市販では多くの甘酒が販売されていますが、加熱処理をして流通させなくてはならないため、できれば手作りの甘酒がおすすめです。
お正月に飲むイメージがある甘酒ですが、実は夏の季語なのです。
夏はどうしてもバテやすくなりますが、疲労回復効果もあるので、健康や美容のためにも甘酒を飲むことを習慣づけてくださいね。