大麦は小麦と比べると食べる機会はあまりないと思いますが、近年健康に良い食べ物として世界的にその効果が認められています。
大麦にはどのような栄養成分が含まれているのか?
また、健康やダイエットになぜ効果があり注目されているかなど大麦について詳しく紹介します。
大麦の特徴!小麦とは何が違う?
「麦」とつく食べ物は大麦以外にも小麦やライ麦などがあり、全てイネ科の植物です。
「麦が大きいから大麦」と思うかもしれませんが、実は小麦とそれほど大きさは変わりません。
では大麦と小麦の違いは何かというとタンパク質の種類です。
小麦にはグリアジンとグルテニンという2種類のタンパク質が含まれています。
水を加えてこねると2つのタンパク質が絡み合い粘りや弾力性のあるグルテンになります。
このグルテンのおかげでパンがもちもち、ふわふわになります。
一方、大麦のたんぱく質はホルデインと呼ばれます。
粘りがないのでパンにしても膨れませんし、もちもちにもなりません。
大麦はご飯で食べるのが一般的ですが、小麦を炊飯器で炊いてみるとパサパサとなります。
そして大麦を原料としたもので有名なのがビールや麦茶です。
小麦のビールなども最近は出てきていますが、圧倒的に大麦の商品が多いです。
近年、小麦のグルテンがアレルギー症状など身体にさまざまな悪影響を及ぼすと言われています。
※実際のところはグルテンではなく、品種改良した小麦に問題があるとも言われていますが
「グルテンフリーダイエット」という言葉もあるように、最近は小麦製品を摂らない人も増えています。
大麦にもグルテンが少量含まれていますが、アレルギー表示の義務もなく、小麦アレルギーの人でも大麦は食べられる人はいます。
ただし、大麦を食べてもアレルギー症状が出る小麦アレルギーの人はいるので食べる際は注意が必要です。
大麦の注目の栄養成分と効果効能
大麦は他の食べ物と比べて食物繊維が豊富に含まれています。
食物繊維を食べると便通が改善すると言われていますが食べ方を間違えると逆に便秘になる場合があります。
食物繊維には大きくわけると水溶性と不溶性の2種類あり、
水溶性をとらずに不溶性の食物繊維ばかり摂っていると便秘解消どころか、ますます便秘になる可能性が高くなります。
不溶性と水溶性の摂取する割合は2:1が良いとされています。
水溶性の割合が高くなる分には問題ないのですが、実際は不溶性の割合が3:1、4:1、あるいはそれ以上になっている場合が多いです。
水溶性の食物繊維が多い食べ物は昆布やのり、ワカメなどの海藻類なのですが、それ以外の食べ物は不溶性の割合が多く、中には食物繊維のほとんどが不溶性という食べ物もあります。
食品中に含まれている不溶性・水溶性食物繊維の量
食品名 | 不溶性(g) | 水溶性(g) |
---|---|---|
大麦 | 3.6 | 6.5 |
ライ麦 | 8.2 | 4.7 |
小麦粉 | 1.3 | 1.2 |
玄米 | 2.3 | 0.7 |
白米 | 微量 | 0.5 |
ごぼう | 3.4 | 2.3 |
アボカド | 3.6 | 1.7 |
さつまいも | 1.8 | 0.5 |
アーモンド | 9.3 | 0.8 |
チアシード | 30.6 | 6.6 |
(可食部100gあたりの含有量)
この表を見ると食物繊維が豊富と言われているアーモンドは不溶性が水溶性の10倍以上含まれていますし、今人気のスーパーフードのチアシードも食物繊維の量は多いのですが不溶性の割合が圧倒的です。
その中でも大麦は不溶性よりも水溶性の食物繊維が多い数少ない食べ物の一つです。
そして大麦の水溶性食物繊維は量が多く含まれているだけという理由で注目されているのではありません。
大麦注目の成分β-グルカンとは?その効果や効能について
水溶性食物繊維にもいくつか種類がありますが、大麦に多く含まれているのは「β-グルカン」と呼ばれるものです。
このβ-グルカンは多くの効果や効能が期待されている成分で、日本以外では欧米諸国やオーストラリア、ニュージーランド、韓国などでも公的機関が機能性表示を認めているほどです。
β-グルカンの効果と機能性表示を認めている国
β-グルカンの効果 | 認めている国 |
---|---|
食後の血糖値を抑える | 日本、欧州 |
正常な腸機能の維持 | 日本、韓国 |
排便促進効果 | 欧州 |
心疾患のリスクが減る | 米国、カナダ、欧州 |
コレステロール値が低下 | 日本、欧州 |
またこのような効果以外にもβグルカンには内臓脂肪面積が減ったというデータも出ていますのでダイエット効果も期待されています。
日本では2015年から機能性表示食品が販売されていますが、機能性表示食品とは
「おなかの調子を整えます」「脂肪の吸収をおだやかにします」など、特定の保健の
目的が期待できる(健康の維持及び増進に役立つ)という食品の機能性を表示する
ことができる食品です。
またβ-グルカンは
- 大腸の中間で効果を発揮
- 糖質の消化吸収を抑える
- セカンドミール効果
という特徴があります。
例えば、朝食にβグルカンを含む食事をすると、次の食事まで血糖値の上昇を抑えてくれます。
さらに、白米7割、大麦3割のごはんを12週食べて腹囲や内臓脂肪面積がそれぞれ減少したデータも報告されています。
このように大麦に含まれる「β-グルカン」という水溶性の食物繊維と摂ることで、腸内環境が改善して便通が良くなります。
便秘の時は腸内に老廃物が溜まったままなのであらゆる病気の原因となったり肌荒れしやすくなります。
ですが、便通が改善することとでこれらが解消されたり内臓脂肪面積が減少するなどダイエットにも効果がある食べ物です。
また腸内環境が改善されると免疫力がアップします。
食後の血糖値が改善されると糖尿病の予防につながり、アメリカや欧州では心疾患(狭心症と心筋梗塞など)のリスクが減ると報告されるので病気になりにくい体になります。
大麦の難消化性でんぷんの効果効能
大麦でもう一つ注目されているのが難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)です。
レジスタントスターチとは「消化されにくい(レジスタント)でんぷん(スターチ)という意味です。
通常のでんぷんは小腸で消化・吸収され大腸まで届きにくいのですが、難消化性でんぷんは大腸の奥まで送り届けられます。
すると大腸のビフィズス菌などの善玉菌がこれを食べて全身の健康に影響する短鎖脂肪酸の産生を高めてくれます。
短鎖脂肪酸が増えると大腸内が弱酸性化して善玉菌の住みやすい環境となりますが、反対に悪玉菌がすみにくくなり、その結果大腸の発がん物質である有害な毒素の産生も減ります。
これまで腸内環境を改善する食べ物の代表といえばヨーグルトでした。
ですが、ヨーグルトのような動物性の乳酸菌よりも、大腸まで届く食物線維や難消化性でんぷんが豊富な大麦が腸内環境改善で注目されています。
豊富なミネラル
大麦にはビタミン類はそれほど含まれていませんがミネラルは豊富です。
その中でもカルシウムとカリウムが特に豊富に含まれています。
現代人はカルシウムの摂取不足が問題になっていますが骨や歯の成分となり高血圧や動脈硬化の予防も期待されている成分です。
またカリウムはナトリウム(塩分)の排出を促す成分でむくみの予防や改善、またこちらも高血圧の予防にも最適と言われています。
種類 | 働き・効果・効能 |
---|---|
リン | カルシウムと結合して骨や歯をつくる |
鉄 | 赤血球のヘモグロビンの材料、貧血予防など |
カルシウム | 骨や歯の材料、精神の安定など |
カリウム | ナトリウムを排出、むくみ改善など |
マグネシウム | カルシウムの量を調節、ストレス抑制など |
銅 | 鉄を使いやすい形に変え、赤血球を合成する |
亜鉛 | 酵素の構成成分、細胞の新生や代謝に関わる |
大麦の種類とスーパー大麦について
大麦は米と同様に大きく分けると「うるち性」と「もち性」あります。
うるち性の代表的な大麦
●押麦:最もスタンダードな大麦
粒の真ん中にある黒条線が特徴です。
蒸気に当てた後にローラーで押しつぶしたもので「麦とろごはん」などに利用されます。
私は牛タン定食に出る麦飯が好きですがあれも押麦です。
●米粒麦:米そっくりに加工した麦
真ん中の黒条線で半分に切り、米にそっくりなので炊き上がった麦ごはんの大麦があまり目立ちません。
●丸麦:押しつぶさない麦
大麦の外皮を取り除き、周りを削り取った状態そのままの形をした丸い大麦です。
もち性の大麦の「もち麦」
もち性の大麦でもちもちとした食感があるのが「もち麦」です。
「冷めても硬くならずにモチモチの食感が続いて、とてもおいしく食べやい」という特徴があります。
また、もち麦は押し麦よりも食物繊維の量が2割も多いです。
注目のスーパー大麦
そしてここ数年注目度が急上昇しているのがスーパー大麦です。
オーストラリアで開発された「バリーマックス」というスーパー大麦は皮をむかなくても食べられます。
そして歯応えがあって香ばしくかむほどに甘みが出る新しい大麦なのですが注目するのはその栄養価です。
なんと通常の大麦より
- 水溶性食物繊維が2倍
- 難消化性でんぷんが4倍
多く含まれています。
日本でも帝人が「バリーマックス」の研究・開発されていてようやく最近商品化されました。
詳しくはスーパー大麦とは?その効果効能と食べ方やダイエット方法、大麦との違いについて
をご覧ください。
まとめ
- 大麦は水溶性食物繊維と難消化性でんぷん(レジスタントスターチ)が豊富
- この2つの栄養成分が腸内環境を改善して便秘の解消や病気の予防・ダイエット効果がある
- 現在人気の大麦はもち麦で、注目されているのはスーパー大麦
白米にも食物繊維やレジスタントスターチが含まれていますが微量です。
是非便通が良くないという方、生活習慣病などの病気に悩んでいる方や予防のためにも普段の食生活に大麦を摂り入れてください。
白米7割・大麦3割からスタートして徐々に増やしていきましょう。
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